「学習する組織」入門    自分・チーム・会社が変わる  持続的成長の技術と実践  VUCA・アジャイルの時代に求められる組織能力  前編

チームと組織

VUCAの時代と言われ、旧来のトップダウンによるピラミッド型の組織・指揮命令系統から、現場が環境の変化に対して迅速に判断を行って、アジャイルに軌道修正を図っていく経営スタイルの必要性が言われています。

これを実現して組織が成功し続けるには、「目的に向けて効果的に行動するために、手段としての意識と能力を、継続的に高め、伸ばし続ける組織」が必要であり、それを「学習する組織」とピーター・センゲらが呼んで書籍にまとめています。この書籍を日本人にわかりやすく基礎部分に絞って解説したのが本書です(小田理一郎著、英治出版)

この記事では入門書と自称しながらも400ページに及ぶ本書のエッセンスを紹介します。

全体の構成

全体は大きく4つのパートに分かれています。

最初は「学習する組織とは何か」。定義・成り立ち・組織開発に大きな影響を与えたということ、目指す成果などについてです。

次の「組織の学習能力」では、最初に全体の構造と、その核となる能力の概要が語られ、その後多くのページを割いて核となる5つの能力について事例を用いながら説明をします。

そして「実践上の課題と対策」では、学習する組織への変化を遂げようとする際の始め方と、推進していく上での典型的な課題と対策についてです。

最後の「組織・リーダーシップの未来」では、学習する組織を活かす事ができる組織のあり方やリーダーシップについてのパートとなっています。

学習する組織とは何か

この記事の冒頭でも書いたように、 学習する組織とは事業環境の変化に応じて、自分たち自身を変化させ、適応させていく組織であり、以下の様に定義されています。

目的に向けて効果的に行動するために
集団としての意識と能力を
継続的に高め、伸ばし続ける組織

意義がある目的に向かって、個人個人が努力するが結果として集団としての高い意識と能力を身につけ、それを単発のアクティビティとしてではなく、継続的に行っていく組織、を学習する組織と呼んでいます。

こういった組織はチーム・組織の文化や個人間のコミュニケーションを改善するだけでなく、財務パフォーマンスも市場平均よりも大きく向上させていることが調査の結果わかっています。

この概念が1990年代に発表されてから数多くの企業で取り組みがされ、組織開発にも影響を与えたと言われています。

組織の学習能力

組織の学習能力の全体構造を表しているのが下記のチャートです。

右半分をダブル・ループ学習と呼ぶ高次の学習サイクルを指します。多くの組織で上段のPDCAはまわしていると思いますが(シングル・ループ)、これは計画を立てる際の前提(=学習する組織ではメンタル・モデルと呼びます)が合っている場合には有効です。

しかしメンタル・モデル自体が誤っていたら、いつまでPDCAを回しても計画は達成されません。本書の中では日本国内で多機能で売れていた製品を海外で販売する際に、多機能=善、というメンタル・モデルが通用しない場合が例として挙げられています。

ダブル・ループ学習では前提、メンタル・モデルそのものを見直すことを実施します。これによって、より適切な意思決定や戦略立案を可能にするというのが考え方です。このサイクルを深い学習サイクルを呼んでいます。

左半分はこの深い学習サイクルを持続させ定着させるための環境を示しています。三角形の頂点にある理念は、組織の目的・存在意義・価値観・規範といったものです。この理念を実現するために必要な理論・ツール・手法といったものが必要だと考えられます。そしてそれらの理論等を学ぶための研修やワークショップなどの学習インフラも必要です。これらを総称して戦略の枠組み構造と言っています。

なおこの書籍の60%は、この戦略の枠組み構造の中心となる5つの能力について、事例を交えて詳しく説明することに使われているのですが、その5つの能力とは以下の通りです。

自己マスタリー自分が心から求めている結果を生み出すために、自身の能力と意識を絶えず伸ばし続けること
システム思考ものごとのつながりや全体像を見て、その本質について考えること
メンタル・モデル思考の前提や枠組み。効率的な思考を可能にする一方で、バイアスや思い込みを生み出す
チーム学習グループで一緒に探求することで、自分たちの意識と能力を共同で高めること
共有ビジョン組織全体で互いの個人ビジョンを聞きあい、共有ビジョンをつくること

後半へ

この後は、学習する組織への変革を実践していく際の、典型的な課題とそれらに対する対策、そして学習する組織化が進んで成熟した段階での課題、新たなリーダーシップの形について語られていきます。

後編はこちら

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