チームのパフォーマンスを上げたい・良い関係を築きたいと思う人が参考にできる本 一兆ドルコーチ

チームと組織

何らかのチーム活動をしていて、そのパフォーマンスを上げたい、より良い関係を築きたいと思っている人に幅広く参考になると思います、「一兆ドルコーチ」(ダイヤモンド社)

コーチングに興味があったり、部下の指導やチームリーディングを向上させたいと思っている方たちにとっては、特にベストフィットでしょう

この本はビル・キャンベルという、シリコンバレーの数々の経営者をコーチして成功をアシストした人物の教えをまとめたものです。ビルは人生の前半をアメリカンフットボールに捧げ、選手・コーチとして過ごしました。ビジネスの世界に転身したのは39歳になってからと、かなり遅いタイミングなのですが、そこから頭角を現していくつかの会社のCEOを務めたのちに、ビジネスコーチとしてシリコンバレーの数々の経営者たちを中心にコーチして成功に導きました。例えばアップルのスティーブジョブズ、ツイッターのCEO,フェイスブックのCOO,元副大統領アル・ゴア、スタンフォード大学の学長、優秀なプロ経営者などなど、すごすぎるラインナップです。

この本を読んで得られることは?

まず第一にパフォーマンスが良く、働いていて気持ちが良いチームを作るための具体的なヒントを得ることが出来ます。より大事な事として、その背後にあるスーパーコーチの信念を理解することでチーム作りの根本を知ることが出来ます。言い換えるとチームを作っていくための、大きなコンセプトも、神は細部に宿るを細かいテクニックも両方とも身に着けることが出来ます。

そして文中に出てくるエグゼクティブたちでも、ビルの様なコーチによる手助けを受けていることを実感することで、そういった人たちを特別視しなくなり、自分も人の援助をうまく受けながら、良いチームを作って成果が残せる気がしてきます。

本全体のメッセージ

この本全体で著者たちが行おうとしたことは、ビル・キャンベルという伝説の人物が実行したコーチングの内容と方法を伝えることでした。それを4つに分けてまとめています。

まずはマネジメントスキル、ふたつめに信頼関係の構築、3つめにチームの構築、そして最後に職場への愛の持ち込み、についてです。

これらのビルのメソドロジーを伝えることによって、多くのマネージャーたちがチームのコーチとしてパフォーマンスと幸福度を上げることが出来る様になってほしい、というのが著者が本書を通じて送っているメッセージです

第1章〜第3章

まずは第一章:ビルならどうするか、です。この章では、ビル・キャンベルの半生を追いながら、ビルが何をどんな風にコーチしたかのエッセンスを語っています。

ビルはフットボーラーとしてキャリアをスタートし、コーチをして失敗もしたのちに、ビジネスの世界に転身してエグゼクティブになりました。

成功や失敗を重ねる中で彼が学んだことは、「チームが第一」「思いやりが成功のカギ」「すばやく動く」「リスクをとってやってしまう」「人材育成やリーダーシップはきめこまかく」などでした。

企業の成功にとっては、優秀な個人を惹きつけて大きな成果を出してもらうことが大事な条件ですが、もう一つの重要な要素がその個人たちがコミュニティとして機能するという事です。

優秀な人たちをコミュニティにするためにコーチする、さらに、コーチを受けた人々がまた自分のチームに対して同様のコーチが出来るように教えていきました。なぜならすべての会社がすべての部署にコーチを付けることは現実的には出来ないからです。ビルのコーチを受けた人たちはこう考えます「ビルならどうするだろう?」。そして受けた教えを活かしてチームをコミュニティにするという連鎖を作り出しているのです

続いて第二章「マネージャーは肩書がつくる。リーダーは人がつくる」は、マネージャーとしてチームをリードする時に大事なことを解説しています。

成功のためにはマネジメントが重要であること、マネジメントの根本にあるべきなのは「人がすべて」という考え方であることを明らかにしています。その考え方に基づいた、様々な具体的なマネジメントスキルを教えてくれます。one-on-oneやチームミーティングの具体的な原則や運営の仕方、決断の下し方、難しい従業員への対処の仕方など、そのまま使いたくなる様な具体的な内容ばかりです。

例えば定期的に行うミーティングではいきなり議題に入るのではなく、家庭や趣味や週末に何をしたのかなどを話すことから始めること、といった事です。なぜか?それはチームのパフォーマンスと職場環境が密接に関連しており、職場環境を良くするにはチームメンバーがそれぞれが興味深い生活を持った一人の人間同士として知り合って、一緒に仕事をすることを楽しめることだ、と知っていたからです

また、マネージャーは何でも決めて指示を出すのは良くないが、必要な場面では決断を下すことの重要性を説きました。決断の下し方についても第一原理に基づくことを言っています。必ず物事の核心に迫ることを強調していました

マネジメントの根本にあるべきなのは人がすべてという考え方であること、それを実現するための具体策が語られているのが、この章です

次の第3章:信頼の非凡な影響力、は強いチームを作るために根本的に必要な信頼関係についての教えをまとめたパートです

多くの場合仕事をする上で信頼という事は声高に語られることはありません。しかしビルにとっては最優先かつ最重要な要素でした。

そしてビルにとって信頼とは、「約束を守ること」「誠意」「率直さ」「」思慮深さ」を意味していました。こういった信頼関係を築くことで、このチームは安心して働けるという心理的安全性に結び付き、その結果が最高のチームになるというのがビルの信念でした。

具体的に信頼関係を築くために説いたのは、正直で謙虚である、全身全霊で話を聞く、率直に思いを伝える、何かが起こった瞬間にフィードバックする、しかし思いやりは忘れない、指示を与えるのではなく考えさせる、となどといった事でした。

第2章で語られた様なマネジメントのヒントを実践して効果を大きく上げるためには、その土台としてチームに信頼関係が必要だという事をわからせてくれるのが、この第3章です

第4章〜第6章

第4章:チーム・ファースト」は自分のエゴよりもチームファーストの考え方が重要であると説き、どうやってその様なチームを実現するのかの方策を授けてくれます

彼がコーチしたのはチームが抱える問題よりも先に、チームの改善でした。誰が問題にあたっているのか、適切なチームが配置されているのか、そのチームが活躍出来るための環境は揃っているのかといった事です。良いチームが問題に対処すれば、一番良い解決策が実行できると知っていたのです

チームファーストと組織に埋め込むには、その考え方が出来る人材を選び、ペアで仕事をさせることで同僚同士の関係を発展させ、ダイバーシティを重んじてチームを構成することを推奨しました。

人選びについては具体的には「知性」「勤勉」「誠実」「グリット、つまりやり抜く力」の4つの資質を重んじていました。

またダイバーシティを重んじる事の有用性を知っており、女性が男社会で感じる心理的な壁を乗り越えられるようなサポートを果たすなど、ダイバーシティの実現に心を砕きました

そして組織をチームファーストにしていくためにリーダーが果たす役割を説きました。チーム内の人間関係の問題に正面から取り組むこと、組織の中の不満に素早く対処すること、正しく勝利することを目指すこと、苦しい時こそリーダーは先頭に立つこと、人々の間の隙間を注意深い観察をもって感知し、そのギャップを埋めることに注力すること、などがポイントです

強いチームは、チームファーストの考え方を持った人たちが集まり、その人たちを適切にリードすることで実現するという事をまとめたのがこの章でした

続く第5章は:パワー・オブ・ラブ」は、ラブ・愛という、普段ビジネスや職場ではあまり意識をしない様な概念が、どうチーム作りに反映されるのかという、ある意味ビル・キャンベルの教えの根幹の部分です

一般的にはビジネスには私情を持ち込まないように教えられてきています。しかしビルは人間と仕事の部分を分けずに、一人一人を大事に扱ったとあります。その愛を持って人に接し、その人の家族に興味を持ち、大事な時には何をおいても駆けつける、頑張っている人には派手な応援をするといった事をするのがビルでした。

家族に興味を持つという話では、単に家族のことを話題にするだけではなく実際に家族と知り合って交流したりしていました。人が病床に伏せれば足しげく見舞いに通い、出来る限りのサポートをしたといいます。人がプレゼンテーションをすれば、良いタイミングで大きな拍手をして元気づけるといった、一貫した行動をとっていました

またビルがもうひとつ大事にしていた愛があることが書かれています。それは創業者への愛です。ビルは会社経営はマネジメントが重要だと捉えていましたが、それだけではビジョンが抜け落ちてしまうことがあります。創業者が事業に対してもっているビジョンと愛情を愛し、実際に様々な局面で創業者を支援しています。

愛を持って接することでチームがコミュニティになる、という考え方がビルの教えだったというのが第5章のメッセージです

いよいよ最後の第6章:ものさしです。ビルが自分の成功を何で測っていたのか、その背後の信念は何なのかをまとめた章となっています。

この章は著者のひとりであるグーグルの元会長エリックシュミットがグーグルの持株会者であるアルファベットの会長を退こうと決める時のエピソードで始まります。誰もが知る世界的な名経営者といえる彼ですら、自分が変化に向かおうとしている時に、心の支えを必要としていることを感じます。そしてそこに至るまでにコーチとしてビルが果たしてくれた役割を振り返っています。

この様に後々までも大きな影響を数々の経営者に対して残したビル、彼は何を自分の成功の物差しにしていたのか、というのが本書のクロージングです。ビルはコーチによって報酬を得ることはほとんどありませんでした。その理由を聞かれた際の答えは、「自分は自分の影響力を図る別の物差しをもっているからだ」と答えたそうです。そしてその物差しとは、自分が何らかの形で応援した人のうちの何人が優れたリーダーになっただろうと考えることだったそうです

全体のまとめ

冒頭で述べた様に、この本は何らかのチーム活動をしていて、そのパフォーマンスを上げたい、より良い関係を築きたいと思っている人には、幅広く参考になるものだと思っています。解説を通じてそのことを実感してもらえたのであれば幸いです

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