中小企業庁が発行している2022年版中小企業白書に、中小企業が人材育成を最大の経営課題として捉えていて、実際に課題意識やアクションが成長率と関連しているということが書かれています。この記事では中小企業白書をもとに、人材育成と企業の成長について説明します。
重視する経営課題
営業・販路開拓(59.7%)や組織(39.8%)、商品・サービスの開発・改善(37.3%)などを抑えて、断トツのトップは「人材」でした(82.7%)。
経営者が従業員に求めるスキル
続いて経営者が従業員に対して、どの様なスキルを求めているかを5年前と現在との比較で見てみます。以前と変わらず上位に来るのは「チームワーク(現在68.4%)」「コミュニケーション力(現在64.6%)」「職種特有の技術力(現在59.5%)」といったところです。
一方で5年前と比較して大きく変わったのは「マネジメント力」(5年前25.6%→現在45.1%)「IT」(5年前16.0%→現在35.0%)といったところです。
恐らくVUCAの時代と言われるように環境の変化が大きくなって、経営者だけでマネジメントしきれる状況ではなくなってきたために、従業員にもマネジメント力を求めるようになり、またDX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要に迫られる様になってきたので、ITを必要としてきたということが言えるのではないでしょうか。
経営者の能力開発に対する積極性と、従業員の仕事に対する意欲
この様に経営者の人材に対する課題感は強いわけで、必要とするスキルも時代の変化に応じた切実なものがあるわけですが、実際に経営者が従業員のスキル開発に積極的だと、それに見合ったベネフィットがあるのでしょうか。
従業員の仕事に対する意欲は、経営者が従業員の能力開発にどれだけ積極的かによって大きく異なるという調査結果がでています。能力開発に非常に積極的な会社では、意欲的な従業員が87.6%なのに対して、非常に消極的な会社では42.9%にとどまっているということです。
本記事の後段で、能力開発に積極的な会社の方が売上高増加率が大きいという結果についても触れますが、従業員の意欲がこれだけ違えば自明の理だと言えるでしょう。従業員の能力開発に積極的になることは投資対効果がある経営者の行動だと言って良いと思います。
能力開発の目的
では従業員の能力開発の目的はどこに向けられているのかというと、業種によって傾向が異なります。それぞれの業種でトップに挙げられている目的は以下の通りです。
業種 | トップ項目 | 率 |
建設業 | 技術力向上 | 68.0% |
製造業 | 生産性向上 | 66.7% |
情報通信業 | 技術力向上 | 67.1% |
卸売業 | 顧客満足の向上 社内の活性化 | 57.9% |
小売業 | 顧客満足の向上 | 61.3% |
サービス業 その他 | 顧客満足の向上 | 56.2% |
能力開発計画や方針の明確化
能力開発に対する積極性別に、能力開発の計画や方針の有無について見てみると、やはり積極的な会社ほど、計画や方針が明確化されているようです。これは当たり前の様に感じられますね。積極性が低い会社がわざわざリソースをかけて計画や方針を作る道理がありません。一方で積極性が高ければ、どの様に能力を伸ばすかという方針や、具体的な計画を立案することで、より効果的な能力開発を目指しているということでしょうか。
売上高増加率との関連
能力開発を行うと実際に具体的なリターンがあるのかという疑問にも、この白書は答えています。明文化された能力開発計画や方針がない企業の売上高増加率が2.0%に留まっているのに対し、計画や方針が明文化されている企業は11.6%の成長を遂げているようです。従業員の能力というインフラに対して、強い興味・関心を持って投資をすると、それが企業の成長にもつながるという好循環が、実際に回っていることが見て取れます。
人材への関心・投資を
興味深い調査結果だと思う方が多いでしょう。中小企業はひょっとしたら大企業以上に能力開発の重要性が高いのかもしれません。会社の成長に大きく寄与する人材への投資を見直してみてはいかがでしょうか。
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