人生100年時代ってなに? ライフシフトが提唱する新しいキャリアの築き方

個人

人生100年時代という言葉を様々な場面で聞くようになりました。それに伴ってリスキリングとか、セカンドキャリアとか、これまでにはなかった様な概念が発展しつつあります。

人生100年時代というのは、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットといういずれもロンドン・ビジネススクールの教授の共著である「ライフシフト」という本の中で提唱された考え方です。ますます進む長寿化社会に向けて、どう人生を生きていけば良いのかについて、私たちに指南を与えてくれる本となっています

対象の読者層

この本は長寿化社会、あるいはより一般的な言葉では高齢化社会が進む中で、将来に不安を覚えたり、今後のキャリアやお金の問題にどう考えて取り組んでいけば良いのだろうと思う人たちに読んで欲しいものとなっています。いまの日本では年金の問題を中心に、高齢化社会がさらに進んだ時にどうなるんだろうという不安を持たない方は少ないと思うので、そういった意味では、老若男女問わず、すべての人に役に立つ一冊でしょう。

本書の中でも1945年生まれ、1971年生まれ、1998年生まれと、3つの異なる世代のモデルが描かれるので、様々な世代の読者が自分の近似値としてモデルを捉えて読み進むことが出来る様になっています

読了して得られるもの

この本を読むと、ずばり自分の人生を長期的な観点で設計していこうという気持ちになります。自分が100年生きる可能性が実感として感じられるので、その100年を如何に良い人生としていくかという発想を立てられるようになります。そして高齢化社会というととかく年金の問題がクローズアップされがちですが、それだけに留まらず、仕事・キャリアであったり、男女の役割分担、健康や友人関係、新しい物事へのマインドセットなど、100年の人生を良いものにするために必要な幅広い分野へのヒントを得ることが出来るでしょう

全体のメッセージ

この本全体のキーは、これまでの教育→仕事→引退という3つのステージで成り立つ世界が終了することに伴って必要となる、新しい人生の設計を提案していることです

これまでの様に60歳や65歳で引退してあとは年金で暮らすという生き方は不可能になっていく、これまでより長く働く必要がある、しかし一方で技術の進化や産業構造の変化が進むので、これまでの様に20代までに身に着けた教育で職業人生を最後まで全うすることは出来なくなる、というのです。

そこで必要になるのが「生産性資産」「活力資産」「変身資産」と呼ぶ3つの無形資産です。これらを築いて活用することで、有形資産つまり長寿を支えるお金の問題を解決して、長寿の恩恵を得ようということを提唱しています

無形資産を形成・活用していく

本書で描かれるモデルのうち、1971年生まれのジミーを例にとりましょう。老後の生活に必要なお金、公的年金、企業年金などから考えると、70代前半までは働く必要があると言います。より若い世代になると80代まで働く必要が出てきます。それはあまりにも気が滅入る話だと感じられますし、先ほどお話ししたように技術や産業構造が変わるので、これまでの様な取り組みでは、70代・80代まで働き続けるのは無理でしょう

そこで必要になるのが無形資産です。ひとつは「生産性資産」仕事で生産性を高めて成功するために必要な資産です。スキルや知識が代表です

ふたつめが「活力資産」健康、友人関係、家族関係など、肉体的精神的に健康であり幸福を感じるという事を指しています

最後が「変身資産」長く生きる間に起こる様々な変化に対応するために必要な、“自分を良く知ること”“人的ネットワークを持っていること”“新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること”が挙げられます

1971年生まれのジミーは実際にどの様に無形資産を活用しながら長寿を全うしていくのでしょうか。いくつかのシナリオが描かれますが、例えばその中のひとつは、40代中盤で余暇を、それまでのレクリレーション(娯楽)からリ・クリエーション(再創造)に振り向けることを決めてスキルや人的ネットワークを広げると共に、夫婦のあり方、役割分担を変更し、健康への取り組みを開始するケースが描かれます。その結果として勤めていた会社を退職した後も独立して仕事をすることが出来、70代になっても刺激的な仕事をし、経済的にも精神的にも充実した生活を送れるというものです

この様に長寿社会においては、無形資産を計画的に増やして将来に備え、旧来の延長ではない仕事の選択をしていくことが重要になっていきます

教育→仕事→引退の3ステージの人生が終わり、多様なステージ化へ

これまでの3ステージ、つまり教育→仕事→引退、という定型的な順番、また決まった年齢でステージを移行するという時代から、今後はどう変わっていくでしょうか。

「エクスプローラー」「インディペンデント・プロデューサー」「ポートフォリオ・ワーカー」という新しいステージが出来ると言います。これは、今までの様に20代前半までが教育、の様に画一的なものではなく、年代に関係なくそれぞれのステージを経験したりする様になっていきます。これまでの教育・仕事・引退の3つのステージに、新しい3つのステージが年齢にかかわりなく選択肢となることで、長寿社会を生き抜いていくことが出来る様になります

お金の問題

この様に多様なステージを経て、長期間働く事が今後は必要になってくる訳ですが、その際にお金についてはどの様な意識を持って取り組めば良いのでしょうか。二つのことが必要です。ひとつは自分が生活していくために必要なお金や将来に渡っての収入についての知識を持った上で、「自分なら資金の問題を解決出来る」と思う「自己効力感」。そして自制心を発揮して、みずから現在と将来にどれだけお金を使うかというバランスを取る「自己主体感」が挙げられています

自己効力感は、金融リテラシーを持つこと、と言い換えてしまってでも良いのですが、自己主体感については少し補足します。お金に限らずセルフ・コントロールには苦労します。減量のために運動すべきとわかっていて、実行するつもりもあるのに、実際には運動しない、さらにデザートを食べてしまったりする、などがその例です

これを克服して長期的にお金の問題を解決するために、「未来の自分を想像して、その自分に責任を感じる」「未来に向けた計画の変更がしにくい様に、例えば貯蓄の自動化などの、計画を変更しにくい手段を講じる」「短期的な忍耐の弱さが、長期的な忍耐の強さに勝てる様にする」といった方法を取ることで、自己主体感を高めてセルフコントロールをするわけです

時間が増える

さて、長寿になると確実に増えるもの、それは時間です。20世紀には3ステージの生き方が標準で、その中で労働時間が減り余暇時間が増えるというのが歴史でした。しかし今後マルチステージの人生になってくると、より柔軟で多様性がある時間の使い方が必要になります。その中でも特にレクリエーション(娯楽)から自己のリ・クリエーション(再創造)へといった変化が起きるでしょう。ジミーの事例の中でもこの言葉を使いました。平均寿命が延びて無形資産への投資が求められるようになれば、そこに時間を投資する必要性が増します。これまでの様に増えた余暇を娯楽に使うばかりではなく、自己投資に使うことが、これからの余暇時間の使い方になっていくでしょう

人間関係

長寿によってもうひとつ変わるもの、それは人間関係です。夫婦関係はより長期化し、その中でより多くの変化を経験します。

夫婦関係は以前は生産の補完性で成り立っていました。有形資産つまりお金を稼ぐ夫と、子育てをし、情緒的支援をはじめとした無形資産を築く妻のいう関係です。しかし時代の変化と長寿化に伴い、子育てをしない期間が長くなります。生産の補完の必要性が薄れてくる訳です。一方で年齢に関わりなくマルチステージを生きる様になると、片方が収入が低下している時に相手方が補完するといった、移行に際してのお互いのサポート、そのための調整が大事になってくるわけです

自己意識・教育機関・企業・政府の課題

本書は長寿化の時代を迎えていくにあたっての、自己意識や、教育機関・企業・政府の課題を論じて終了します

100年時代になると、これまでの様な一斉行進型モデルではなく自分で自分の人生を選び取ることが増えるでしょう。そのためには計画をし、実験を行い、何かに習熟していく必要があります。そして自己効力感、自分なら出来るという感覚を持つために世界で起きていることを知り、自己主体感、自ら取り組む、という姿勢を持っていくことが重要です。

人々のそういった活動を後押しする一つの役割が教育機関です。テクノロジーの変化や長寿化に伴って発生する課題としては、「新しいテクノロジーを取り入れること」「年齢にしばられない教育とすること」「創造性・独創性・やさしさ・思いやりについて教えること」「変化に対応できる実践的な専門教育を拡大すること」。Moocsと呼ばれる大規模な公開オンライン講座が普及・拡大してきており、3ステージを前提とした従来の教育機関は対応を迫られていくことになりそうです

企業に目を向けると6つの課題が浮かび上がります。自社が持つ無形の資産を認識すること、マルチステージを生きる従業員のステージ移行を支援すること、人事制度をマルチステージに適合させること、仕事と家庭の関係の変化を理解すること、年齢を基準にすることを止めること、そして人々が新しい実験をすることを容認し、受けて入れていくことです。これらはいずれも人事の制度などを大きく改革することが必要で、大きな抵抗があるはずです。現時点ではほとんどの企業がこの様な課題に対応出来ていません。しかしやがて状況は変わるので覚悟をもっていくことが求められて生きます

さらに政府です。年金をはじめとする財政の問題はもちろんのこと、3ステージを前提にした年齢基準の諸制度の改革、画一的な働き方を想定した法整備の改革など、複雑多岐にわたる広く生活環境を整備する役割が求められていきます。また所得層によって平均寿命が異なったり、現在よりも所得格差が広がったりすることがないような政策が求められていきます。

ただし企業や政府の変化への対応は極めて遅いと言わざるをえません。いっぽうで長寿化、100年時代へは待ったなしで移行していきます。ひとりひとりが考え、行動し、実験していくことが、対応が遅い企業や政府の後押しをすることになる、というのが本書の締めくくりです

全体を通して

以上、これから100年生きることが当たり前になっていく未来に向けて、マルチステージの生き方を行い、有形資産と無形資産をうまくコントロールしながら、パートナーと良好な関係を築いて、長寿の恩恵を受ける人生を送っていきましょう、という著者の提案を紹介してきました。

これによって年金不足などの情報から将来に対して不安だけを募らせるような状態から脱して、将来に向けた備えを計画的に実施して、充実した将来を迎えようという気持ちになって頂けたのであれば、この本の紹介は目的が達成できたかと思います

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